今回は、表題の通り『アップルのリンゴはなぜかじりかけなのか? 心をつかむニューロマーケティング』(以下『アップルのリンゴはなぜかじりかけなのか?』)を読んで、感想や若手社会人の皆さんに役立つ知識をご紹介します。
しかし、一点だけ読者の皆さんにご理解いただきたいことは、本書『アップルのリンゴはなぜかじりかけなのか?』はアップルという企業に関してのみ論じた本ではないということです。現に、本書の「はじめに」にて、著者の廣中直行氏は以下のように断っています。
タイトルはアップルのリンゴに触れているが、リンゴの本ではなく、アップルのビジネスを分析した本でもない。そういう本は山のようにある。
過去の分析ではなく、これからどうすれば良いのかを知りたい。本書は、筆者自身がそうしう問題意識を持ちながら、どうすれば人の「こころ」をつかむことができるか、どういう工夫をすれば売れるのか、それを人間の行動を支配する根本的な原理に立ち返って考えてみたものである。
つまり、本書『アップルのリンゴはなぜかじりかけなのか?』の最大のテーマは、どうすれば人の心をつかむことができるかということです。人の心をつかみ、それをマーケティングに生かすにはどうすべきかを考察したのが本書『アップルのリンゴはなぜかじりかけなのか?』です。
本書を読み進める上で、題名にもあるような「アップルのリンゴはなぜかじりかけなのか?」という問いを忘れかけてしまいました。しかし、読了後すぐに「なるほどな」と思える体験ができた点で、本書は必読に値すると感じました。
本書の内容をさらっと語ることができれば、若手の中で一歩リードすること間違いなしです。また、飲み会などで上司の目に留まることもあるかもしれません。
以下の内容を頭に入れて、一躍注目を浴びましょう!
目次
- 本書の構成
- 1〜3章 ニューロマーケティングの概要・方法論・脳の予備知識
- 4〜10章 人の心を読むための法則
- 11章 結論〜ニューロマーケティングと未来
- ニューロマーケティングの効果
- 単純接触効果
- 好きには2種類存在する
- まとめ
本書の構成
本書『アップルのリンゴはなぜかじりかけなのか?』の章立ては以下の通りです。
- 第1章 なぜ「脳を知る」と良いのか?
- 第2章 ニューロマーケティングの方法
- 第3章 無意識が嗜好をつくる
- 第4章 法則その1~「珍しさ」と「懐かしさ」のバランスを取る
- 第5章 法則その2~“期待”を裏切る
- 第6章 法則その3~「自分は正しかった」と思わせる
- 第7章 法則その4~巧みに不満を演出する
- 第8章 法則その5〜とにかく露出を増やす
- 第9章 法則その6~良い気分にさせる
- 第10章 法則その7~「他者の力」で売る
- 第11章 結論〜ニューロマーケティングと未来
1〜3章 ニューロマーケティングの概論・方法論・脳の予備知識
一九六〇年代のキャッチコピーがうたっていたのは馬力や排気量だった。そのころは自動車の「性能」が売りだったのである。それが一九七〇年だ重じゃ外見やステイタスに変わる。自家用車を持つことが豊かさのシンボルになったのだ。その後「堅実さ」「安全性」と主な訴求点は変わってきたが、…(中略)…二〇〇〇年代の自動車の売り文句には「走るよろこび」「自分らしさ」「環境への優しさ」といった言葉が並ぶ。
(『アップルのリンゴはなぜかじりかけなのか?』P.16より)
ここからわかるように、時代によって求められているマーケティングは異なってきます。つまり、マーケティングの手法も時代によって変化しなければならないのです。従来の方法を踏襲しているだけでは、先の見えない現代では勝ち残れないという内容は、『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」』の内容ととても似通っていますね。
要は、現代のマーケティングに求められていることは、心に訴えること、つまり、数値などで客観的に測ることができる指標を通り越して、いかに好きになってもらうかが勝負の鍵になってくるということを本書では指摘しています。
現に、中国の大手冷蔵庫メーカーハイアールの日本支社ハイアールアジアは、同社の基本戦略の一つとして「家電の嗜好品化」を掲げています。日本の大手自動車メーカーであるマツダは、「美しさ」を追求した車づくりをすることで、車を好きになってもらい、売り上げがV字回復しています。
従来のマーケティング手法は手間がかかり、これからの時代では太刀打ちできない。キーとなるのは好きになってもらうこと。つまり、「好きになってもらうためにはどうすればいいのか」を追求していくのが、これからのマーケティングに必要なことになってきます。
そのためには、脳の動きを学び、意図的に好きになってもらうことをトライしています。そのための手法がニューロマーケティングです。
しかし、脳の動きだけ学んでいればいいというわけではありません。「目は口ほどに物を言う」という言葉があるように、目の動きも好みの判断基準となってくるのです。他にも姿勢を操ることなど、ニューロマーケティングは人を意図的に操作をすることで、商品を好きになってもらうことを狙ってるのです。
4〜10章 人の心を読むための法則
ここが本書『アップルのリンゴはなぜかじりかけなのか?』の鍵となってきます。人の心にはあらゆる法則があるようで、その研究結果が示されています。以下に、もう一度人の心の法則をまとめ直します。
- 法則その1~「珍しさ」と「懐かしさ」のバランスを取る(=新奇性と親近性が求められる)
- 法則その2~“期待”を裏切る(=意外性のある商品を求められる)
- 法則その3~「自分は正しかった」と思わせる(=後付けで消費行動の理由をつける)
- 法則その4~巧みに不満を演出する(=いつも大満足させなくて良い)
- 法則その5〜とにかく露出を増やす(=認知度を向上させる)
- 法則その6~良い気分にさせる(=あなたのための特別感を演出する)
- 法則その7~「他者の力」で売る(=口コミを活用する)
ぶっちゃけていうと、マーケティングの法則を並べただけというような内容でした。しかし、新たに学んだ内容があったので、個人的には面白い内容だったかなと思います。
しかし、ニューロマーケティングについてより詳しく学びたい方は、他の本でしっかりと補強する必要があると感じましたね。
11章 結論〜ニューロマーケティングと未来
ところで、本書のタイトルである『アップルのリンゴはなぜかじりかけなのか?』という問いに対して、本書ではこれまで答えを提示してきませんでした。
結論を示した本章で、「アップルのリンゴはなぜかじりかけなのか?」という問いに対する答えが提示されていました。まずは、アップルのリンゴをデザインしたロブ・ジャノフ氏の発言は以下の通りです。
まず、社名がアップルだからリンゴである。これが一口かじられている理由は、他の丸い果物、例えばさくらんぼなどと間違えられないようにするためだ。
いやいや、そっけなさすぎませんかね?(笑)まあ、物事の真相なんてこんな感じで意外とそっけないものなのでしょうね。
しかし、本書では、ニューロマーケティングの知見を生かした結論が示されています。気になる方は、是非とも本書を手にとって見てくださいね。
ニューロマーケティングの効果
ここからは、本書に紹介されていたニューロマーケティングに活かすことができる効果についてご紹介します。知識レベルで知っておいても損はないと思うので、是非とも頭に入れておきましょう。飲み会などでこういうお話ができれば、注目されること間違いなしですよ!
単純接触効果
単純接触効果とは、文字通り何度も何度も繰り返し接触を繰り返すことで、好感度や評価が上がっていく効果のことです。選挙で繰り返し候補者の名前を叫ぶことや、SNSで自社製品を繰り返し宣伝することは、この単純接触効果を活用したマーケティングと言えます。
単純接触効果は、その対象物に触れる時間は少なくても、回数さえ多ければ効果が現れることが証明されています。また、マーケティングだけでなく、恋愛にも応用できます。
つまり、好意を寄せている相手とは、とにかく何度も会うことが大切です。よく会えばそれだけ親近感が沸きますし、決まった時間・場所で会うような場合なら、なおさら効果がアップします。「あの人とまた会うかな?」と、気になりだしたりするものです。(会いすぎると、逆にうざいと思われるかもしれませんので、注意しましょうね。)
ザイオンス効果は、一度破局してしまった関係にも効くといわれており、やはり短時間であっても、何度も顔を合わせることが復縁への近道です。
好きには2種類存在する
「好き」という感情には、2種類の「好き」が存在するという事実があるようです。その2種類とは、「新奇性(新しさ)」と「親近性(懐かしさ)」だそうです。大事になってくるのは、新奇性と親近性のバランスです。
ところで、皆さんは、コカコーラとペプシコーラのどちらがお好きですか?ご存知の通り、コカコーラとペプシコーラは激しい争いを繰り広げています。
アメリカでは、コカコーラは売り上げ第一位、ペプシはそれを追いかける立場にいました。そこで、ペプシコーラは自社製品のイメージを上げるため、以下のような街頭実験を行いました。
まず、街を歩く人々に目隠しをしてもらいます。次に、2種類のコーラを飲んでもらい、どちらのコーラが美味しかったかを等実験です。ちなみに、この2種類はコカコーラとペプシコーラのどちらかでした。
実験の結果、被験者が美味しいと答えたコーラはペプシコーラでした。これで、より美味しいコーラはペプシコーラだということが判明しました。
この結果を受けて、黙っていないのがコカコーラです。コカコーラは、全くの新しいコーラを作ろうということで、これまでのコーラのレシピを一新した「ニューコーク」というコーラを販売しました。しかし、結果的にはこの計画は完全な失敗に終わったようです。
「カンザス化計画」とも言われたこのコカコーラの計画は、消費者に全く受け入れられませんでした。その理由は、「ニューコーク」がこれまでのコーラとは全く異なったものとなってしまったからだと指摘されています。これは、新奇性にふれ過ぎてしまった結果です。
ちなみに、現在私たちが日常的に飲んでいるコーラは、「クラシックコーラ」という昔ながらのコーラなんです。結局は、昔ながらのもので、少しずつ新奇性を加えていった結果が現在のコーラなのですね。
新しさとなじみ深さのバランスをうまくとり、世の中に訴えていくことが、好かれる商品を生み出していくための第一歩です。ちなみに、新奇性:親近性=100 : 0 の場合でも、世の中に広く受け入れられるものが、真のイノベーションになる、と解釈できます。
まとめ
今回は、『アップルのリンゴはなぜかじりかけなのか? 心をつかむニューロマーケティング』の内容について、私なりの解釈も交えながら書いてきました。今回の主なポイントは以下の通りです。
- ニューロマーケティングという新たな潮流がある
- これからの時代のマーケティングは、いかに消費者に好きになってもらうかが重要
- ニューロマーケティングにはあらゆる手法が存在する
- 脳のみならず、目の動きや姿勢なども操れるかが大切
ちなみに、「アップルのリンゴはなぜ欠けているのか?」という問いに対して、最近は以下のような理由が噂されていました。
- アダムとイブが知恵の実(リンゴ)を食べ、知恵をつけたから
- PCの容量を表す単位のバイト(byte)を、かじる(bite)に掛けている
- 欠けた部分がある=完璧ではないので、それを完成させていく
しかし、どうやらどれも後付の理由のようで、やはりアップルのロゴをデザインしたロブ・ジャノフ氏が発言したように、「さくらんぼなどの他の果物と見間違えられないように」というのが答えなのでしょうか。
私は、アップルのリンゴには「欠けている部分をユーザーのみなさんが埋めるのですよ」というような、ユーザーを取り込むメッセージが隠されているように思えます。あくまで個人的な意見なので参考程度にしかなりませんが、どうも何かのメッセージがあるような気がしてならないですね。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。